14 Sep 2013
今年の1月から始めた「老後のリスク診断」サービス。
これは,その人の親族関係や資産・収入状況をうかがって,
その人の具体的な将来のリスクを分析して,
そのリスクを防ぐ対応策を提案するものです。
当初は,月に1〜2件だったのですが,
最近では月に5件前後に増えてきました。
9月8日(日)に行われた「終活セミナー」でも
私の講演終了後にこの「老後のリスク診断」サービスをご案内したところ,
参加者50名に対して11名の方にお申込みいただきました。
申込率20%突破は驚異的な数字です。
そんな「老後のリスク診断」で,圧倒的に多い「悩み」が
「遺言書」なんです。
とくにお子さんのいないご夫婦からのご相談が多い。
お子さんがいないと,相続人は,配偶者と両親。
両親が先に亡くなっていたら,配偶者と兄弟姉妹です。
法定相続分は,両親は3分の1,兄弟姉妹は4分の1です。
兄弟姉妹は,割合が小さくなるとはいえ,それでも4分の1は大きい。
例えば,亡夫の遺産が自宅3000万円,預貯金1000万円の合計4000万円だと,
妻は夫の兄弟に1000万円を渡さないといけない。
そうなると,預貯金は全部なくなってしまいます。
自宅があるのは嬉しいですが,預貯金が全くないとなると,生きていけません。
1000万円といったら,老後の生活資金としては大きな金額です。
1000万円なら,ほとんどの老人ホームの入居金も払えます。
だから,お子さんのいないご夫婦の場合は,遺言書を書いておいて,
遺産のすべてを夫に,妻にそれぞれ相続させるようにしておくことが重要なのです。
以上のことを知らない方が実に多いのです。
知らないまま,遺言書を作らないと,大変なことになる。
ただでさえ,夫の兄弟姉妹と仲が悪い妻。
そこに遺産の分割問題が起きたら,どうなるか,想像にかたくありません。
もう一つ,多いご相談のケースは,前妻との子がいる,あるいは認知した子がいる
という相談です。
折しも,9月4日に最高裁判所の新しい判決が出ました。
結婚していない男女の間の子は,結婚した男女の間の子の2分の1を相続分とする民法の規定は
不平等だとして違憲と判断しました。
結婚しなかった事情,認知をした事情はさまざまですが,
微妙で複雑な事情であることは確かです。
それゆえに,前妻の子や,認知した子には自分の遺産を相続させたくない。
(あちらには資産がたくさんあるから)相続させる必要がない。
という要望があるのです。
そうしたときも,遺言書を書いておくのですが,
それでも遺留分を防ぐことはできません。
遺留分とは,遺言書で自分の相続分を減らされても,取り戻せる権利です。
子は自分の法定相続分の2分の1が遺留分になります。
前妻の子や認知した子があとからやってきて,遺留分を払えと言い出して
もめるというケースもあります。
そんな事情もあるので,わたしは公正証書遺言(前号記事参照)をお勧めしています。
こんな遺言書のご相談をはじめ,
誰が相続人になるのか,どんな割合(相続分)になるのかなど
基本的なことを知らない方がとっても多いというのが実感です。
もっともっと,相続について,遺言について,知っていただきたいと思います。
そしてその役割を担うのが,「老活セミナー」なのです。
老活弁護士 大 竹 夏 夫
大竹夏夫
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