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「お通夜」(後編)シリーズ「後見人が行く」

献花

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 大竹夏夫の「老活ニュース」第58号 2013年12月31日
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シリーズ「後見人が行く」第3回

「お通夜」(後編)

このシリーズは,後見人の仕事・役割を,
具体的なエピソードでご紹介するものです。

前号の「お通夜」(中編)でお伝えしたように,
私が後見人をしていた和田さん(90歳)のお通夜に
参列することになりました。

お通夜は,日曜日の午後7時から,
施設があった地元の葬儀社さんの斎場で行われます。

自宅を出発したのは,その日の午後4時ころです。

そのまえに,準備も必要です。
久しぶりに礼服をタンスから出してきました。
多少シワがありますが,クリーニングに出す時間はありません。
お数珠と袱紗(ふくさ)を用意して,
香典も作りました。
私の事務所では,ご依頼者様や関係者の方には,
1万円の香典を出すことにしています。

電車を2回乗り継ぎ,約2時間半。
午後6時半ころ,最寄り駅に到着しました。

地方の小さな駅です。
しかも日曜日の晩です。
同じ電車から数人が降りる程度で,他に歩いている人はいません。
あたりはひっそりと静まり返っています。

駅前には,タクシーが6台位止まっていました。
この辺りは,車がないと,どこへ行くにも不便です。

私は,タクシーに乗って,まず
和田さんが入居されていた施設(特別養護老人ホーム)に向かいました。
施設の方へ今までお世話になったお礼を言いたいのと,
和田さんの所持品などを確認するためです。

さらに,和田さんが喉をつまらせたときの状況を
確認するという意味もありました。

施設側に過失がなかったのか?

もし過失があれば,遺族が施設に対して賠償請求をするか,
という問題になります。

私にはすでに元後見人であって,権限はありません。
損害賠償に直接関わるわけではありません。
しかし,損害賠償をするべき相続人の弟さんは,法律の素人です。
法律専門家として,施設に対する賠償請求の可能性もアドバイスするのも,
元後見人としての役割だと思っています。

もちろん,今まで施設の方にはお世話になっていますので,
損害賠償が問題にならないほうがいいなあとは思っていました。

施設に着くと,担当者の方が日曜日だというのに待っておられました。
私がその日に寄ることを事前に連絡していたので,
それで日曜日なのに,わざわざ来てくれたのでした。

担当者の方と今後の退所の手続について話をした後,
事故当時のことも,それとなく話を伺いました。
和田さんは介助を受けずにご自分で食事をとってられたそうです。
ごく普通に食事をされていたのですが,
気道に食べ物が入ってしまったようです。
その内容からすると,施設側に落ち度はなさそうでした。
弟さんにとくに指摘することはありません。
賠償請求が問題にならず,ホッとしました。

和田さんのお部屋に行くと,すでにすっかり片付けられていました。
和田さんの所持品は,ほとんどが衣類と毛布などの寝具です。
大きな紙袋に5袋もありました。

それ以外は,私が後見人として和田さんのために購入した液晶テレビ。
そして満90歳のお祝いに施設からいただいた賞状の2点だけです。

これらは,もはや私には管理・処分する権限がありません。
どうするかは,弟さんに決めていただくことになります。

施設をひと通り確認してから,タクシーで施設から斎場に向かおうとしたとき,
担当者の方から「私も参ります」と声がかかりました。
そして,その方の自家用車に乗せていただいて,
斎場まで向かうことになりました。

斎場は,施設と同じ市内にあるとはいえ,
車でも10分程度はかかる距離です。
しかも,住所と簡単な地図しかありませんでした。
地元の方が車で連れて行ってくれるのは,とてもありがたいことでした。

車の中では,担当者の方から,
これまでの和田さんの生活状況や,施設の状況などの話を
聞いていました。
詳細は長くなるので,割愛しますが,
これも貴重な情報です。
今後の後見業務に役立ちます。

斎場に到着したのは,午後7時15分頃。
お通夜はすでに始まっていました。

斎場といっても,地方ですから,都心とは違って,
ほとんど一軒家の住宅と同じです。

1階が広い座敷のようになっていて,祭壇が飾られていました。
たくさんのお花で飾られて立派に見えました。
ただ,遺影がなかったのは残念です。
用意できなかったようです。

そして,さらに寂しかったのは,
そこにいらしていた方が弟さん,お一人だったことです。

そこには,お経をあげているご住職と
弟さんと,
葬儀社の担当者さん
の3人だけだったのです。

あとで弟さんに伺ったところでは,
他の兄弟や甥姪に連絡をしたけれども,
皆さん,参列を見送られたそうです。

弟さんは「さみしいねえ」とおっしゃっていました。

私たちが到着すると,
弟さんは,お経の途中なのに,立ち上がって
私たちに「遠いところ来てくださって,ありがとうございます」と
あいさつされました。

しばらくお経を聞いた後,お焼香になりましたが,
3人ですから,お焼香もあっという間に終わりました。

午後7時40分ころ,お通夜が無事に終わりました。

その後,2階に上がって打合せをしました。

階段は,まさに普通の住宅の階段です。
そして,2階もまさに普通の住宅と同じような畳のお部屋。
こちらで遺族の方は仮眠できるようになっています。

お茶を飲みながら,弟さんと施設の方と私の3人で,話しました。

施設に残っている和田さんの所持品について,
弟さんは,いらないとおっしゃいました。
そうですよね。予想どおりです。

所持品の処分は,施設側に任せることになりました。
といっても,施設のほうで有効活用していただけるそうです。
とくにテレビは購入してからまだ1年程度しか経っていないので,
捨てられてしまったらもったいなかった。
良かったです。

葬儀費用の話も出ました。
弟さんからは,和田さんの遺産から出してほしいという要望が出ました。
これまた予想したとおりです。

葬儀費用は,一般に遺産から出すことが多いのですが,
法律的には,遺産から葬儀費用を出すには,相続人全員の同意が必要です。

もし相続人全員の同意なく,
権限のない元後見人の立場で私が勝ってに葬儀費用を支出してしまうと,
あとで他の相続人からクレームがくる可能性があります。

そうはいっても,和田さんの相続人はたくさんいらっしゃいますし,
全国に散らばっているので,全員の同意をとりつけるには,
かなりの時間を要します。

葬儀費用の支払いが遅くなったら,ご住職や葬儀社に迷惑です。

クレームになる可能性は低いので,
私としては,リスクを負う覚悟で,
弟さんに葬儀費用分だけはすぐにお渡しすることにしました。

金額は100万円。
ご住職には戒名代とあわせて50万円位,
葬儀社の費用も50万円位だそうです。

心配していた葬儀社の費用は,それほど高くはありませんでした。

日曜日ですから,和田さんの預金を引き出すことはできません。
後日和田さんの口座から弟さんの預金口座に振り込むことにしました。
(銀行に和田さんが亡くなったことを知らせると口座が凍結されて,
 出金や振込ができなくなるので,知らせる前に振り込みました。)

打合せが終わって,電車に乗って,自宅に着いたのは午後11時ころ。
約7時間かかりました。

これで,元後見人として,一応の役割を果たせたかと思います。

後見人の仕事は,原則として,ご本人が亡くなるまで続きます。
逆にいえば,すべての後見事件について,最期は葬儀になるといえます。

後見人として,葬儀にかかわることも大切な仕事なのです。

※この事例は,実際にあった案件をもとにしつつも,
プライバシー配慮と分かりやすさのために,一部設定を変更しています。

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